『おんな城主直虎』あれこれ「井伊谷のばら」2017-11-07

2017-11-07 當山日出夫(とうやまひでお)

『おんな城主直虎』2017年11月5日、第44回「井伊谷のばら」
http://www.nhk.or.jp/naotora/story/story44/

前回は、
やまもも書斎記 2017年10月31日
『おんな城主直虎』あれこれ「恩賞の彼方に」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/10/31/8718137

この回にきて、万千代と直虎との直接対決という場面になった。中世の人である直虎と、近世の人である万千代である。

万千代は主張する……井伊の家を再興して、井伊谷の土地を我が物とすることに、なんの問題があるというのか。

これはそのとおりだと思うのだが、ちょっと疑問に思うことがいくつか。

万千代(虎松)が、井伊を再興するとなったとき、その井伊の家の当主は依然として、直虎のままであって、直虎は万千代(虎松)の後見という立場はかわらなかった、ということでいいのであろうか。では、現在の井伊の家はどのようになっているのか。井伊谷に所領があるというわけでもないようだし、まあ、百姓の仕事はしているようだが。かといって、近藤の支配下にあるようでもない。いったいどういう身分、地位、なのであろうか。このあたりが、どうもあいまいである。

また、万千代についても、新参の小姓の身分で、一万石はないだろうと思ってしまうのだが、さてどんなものなのであろうか。一万石も与えるなら、しかるべく元服して、井伊の家の当主となってから、という手はずになるのが、普通ではないだろうかと思ってしまうのだが。

ともあれ、ここにきて、万千代と直虎の生き方の対立が決定的なものとなった。

直虎は、社会的な身分制度から自由に生きているようにに見える。女性、武士、出家、百姓、商人、そして自由の民……さまざまな身分、職種を、渡り歩いてきた人生をふりかえっている。直虎は、中世、戦国の時代にあって、最も自由に生きた人間なのかもしれない。この意味では、中世、戦国の時代を描いたドラマとしては、もっとも自由な生き方をした人物を描いたことになるであろう。

一方、万千代は、徳川家康の家臣団のもとで、武士として出世することだけを望みとしているようだ。徳川幕府のもとでの大名として活躍することになる井伊の家の祖となる、直政の姿がここにあるのだろう。

いってみれば、中世の自由なエトスを直虎が代表し、かたや、徳川封建制度のエトスを万千代が代表しているともいっていいだろうか。

これから、徳川のもとでの井伊の家が栄えていくプロセスに、直虎がどのようにかかわっていくことになるのか、これが見どころということになるのであろう。

そして、今回は、ネコも登場していた。だが、祐椿尼が死んでしまうと、そのネコはどうなるのか、ちょっと心配である。次回もネコは登場するであろうか。

追記 2017-11-14
この続きは、
やまもも書斎記 2017年11月14日
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/11/14/8727171