『トッド人類史入門 西洋の没落』エマニュエル・トッド/片山杜秀/佐藤優2023-07-11

2023年7月11日 當山日出夫

トッド人類史入門

エマニュエル・トッド.片山杜秀.佐藤優.『トッド人類史入門 西洋の没落』(文春新書).文藝春秋.2023
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613991

話題の本の一つということで読んでみることにした。他に、エマニュエル・トッドで読んだのは、

『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)
『老人支配国家日本の危機』(文春新書)

がある。これらの本を読んで思うところをまとめてみる。なるほどと思うところが半分、ちょっと無理があるなと感じるところが半分、といったところか。

なるほどと思うところは、一つには、家族構成からその地域や国の状態を考えるという発想。これは、これまでに無かったものだと思うが、少なくとも私には、この考え方は斬新なものに思える。また、一定の説得力がある。

とはいえ、注意して読むべきは、家族構成による決定論にはなっていない、というところだろう。そのように読みたくなる面もないではないが、著者自身は、ここのところについては、抑制的である。

ただ、歴史人口学研究者としての領域を踏み出して、昨今の世界情勢にまで議論を広げるあたりは、ちょっとどうかなと思うところがある。特に、日本も核武装すべきとの主張は、なかなか受け入れられるものではないだろう。(日本の戦略的オプションとして、そのような選択肢を持っておくことは否定しない。しかし、現実問題としては、不可能である。そもそも、日本には核実験をする場所がない。)

また、ウクライナの戦争については、かなりロシアよりの立場でものを言っている。これはこれとしてうなづけるものである。多極的価値観の世界という論点からは、ある意味でロシアの言っていることの方に理がある。

が、結果的には、今回の軍事侵攻によって、ウクライナという国民を作ってしまったことはあるだろう。それから、さらにはNATOの拡大と結束という結果を招いてしまった。

読んだ本のうちでは、中国についてはあまり触れられていない。(これも、今後の人口構成から考えて、中国が覇権を握ることは無いだろうという予測には、そうかなと思う。)

さて、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』であるが、読んでおこうかどうしようか、ちょっと考えているところである。

2023年4月7日記

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